かわちゃん紀行

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zoom RSS カリ、早朝6時、カーチェイス。

<<   作成日時 : 2012/03/09 07:25   >>

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多分、そのタクシーに乗る瞬間に気づくべきだったんだろう。

けれど、いくら強くそう思ったとしても、もう後の祭りだった。





私は2週間を過ごしたメデジンから、“ゲリラにお金を払っているらしいからコロンビアで一番安全”と言われている、ボリバリアーノ社の夜行バスに乗ってカリへやってきた。

頻発する睡眠薬強盗にも、車中のスリにも、ゲリラにも襲われることなく無事にカリに到着したことで少しほっとしていたところもあったと思う。

頼まれていた荷物を渡すため、早朝ではあったけれどバスターミナルから知り合いに電話をかけ、「カリに無事着きました。今からタクシーに乗りますので、すぐに着きます。」とだけ伝えて、タクシーの列に並ぶことにした。

警察がタクシーの列を整理していて、少し安心した気持ちになったことを今でも覚えている。

そして待つことほんの2,3分で自分の番がやってきた。

警察に「乗れ。」と言われたタクシー、見てみると運転手が何やら早口でその警察にまくし立てている。



嫌な予感がするなぁ…。



やっかいはごめんだと思った私は、違うタクシーに乗ると言ったのだけれど、半ば無理矢理後部座席に荷物を積まれてしまい、乗らざるを得ない状況になってしまったのだった。




まぁ、いいか。




仕方なしに自分自身もタクシーの後部座席に乗り込み、ターミナルを出ようとした時だった。

突然私のタクシーの運転手が窓を全開にして、すぐ目の前のタクシーに無理やり並び、ケンカを始めてしまったのだ。

かなり腹が立っているらしく、今にも掴みかからんという勢いで、唾を飛ばしながら叫ぶように罵りだしたのである。



うわ、まじで…。
これはちょっとまずいなぁ。



そう思った私は、お金は払うからここで降ろして欲しいと運転手に頼むことにした。

しかし運転手は私の方を振り返り、「そんなことは出来ない!」と血走った目で睨みつけてきたのである。



まじでやばいかも、こいつ…。



初めて真正面から見た運転手の顔は、もうこの時既にまともな表情ではなかったし、口元もよく見ると少し歯がとけているように見えた。



あ…。



思い出したのは、メデジンの橋の下で見た彼らだった。

そう、運転手は彼らと同じ薬物中毒者の特徴を持っていたのだ。



最悪…。



これ以上何かを言えば、怒りの矛先が私に向きそうな感じがした。

とりあえず落ち着こう。

自分がパニックになっては何かあった時も最善は尽くせない。



まずは自分を落ち着かせることにして、ケンカの内容を聞き取ろうとした。

そこでわかったのは、どうやら相手のタクシーはいいがかりをつけられているような感じで、何とか話を丸めようとしているらしかったのだけれど、逆上した私の運転手にはもはや何も聞こえていないということだった。

相手のタクシーはすぐに話し合いを諦め、スピードを上げて私の乗ったタクシーを振り切ろうとした。

その瞬間、最悪なことに、私を乗せたタクシーは相手の車にぶつかりはじめたのである。

まさかの展開に相手も驚いていた。



「この薬物中毒者め!やめろ!」

「何がやめろだ。殺してやる!お前なんて殺してやる!こっちは銃を持ってるんだからな!」



そう叫んでいるのがわかった。

まずい、まず過ぎる。



銃を本当に持っているかどうかはわからなかったけれど、私は知ってしまっていた。

コロンビアの「殺す」が冗談なんかじゃないことを。

思っていたよりもずっと、事態は良くない方向へと進みだしているようだった。



そして早朝6時過ぎ、カリの街中で、タクシー同士のカーチェイスが始まってしまったのだった。

後部座席に私を乗せたままで。



どんどんスピードを上げるタクシー、ぶつかってもいいと思って走っているのがわかった。

私の運転手はもうまともな精神状態ではないのだろう、ぶつぶつと一人で喋りながら相手のタクシーだけを見てアクセルを踏んでいた。

この騒ぎを見た別のタクシーが「そのニーニャ(女の子)を降ろしてやれよ!」、「警察を呼ぶぞ!」と叫んでいるのも、もう彼には聞こえていないみたいだった。




やばい。

どうしたらいい?

もし本当に銃を持っていたら?

その前に事故でも起こされたら?

無事でいられるなんてことはあるん?




あかん。

落ち着かんと。

どうすればこの状況から抜け出せるんか考えんと。

思考を止めたらあかん。




なんだか吐きそうになった。

極度の緊張からか、気分が悪くなってきていることに気が付いた。

ただ不幸中の幸いとでも呼べばいいのだろうか、人間恐怖にさらされていると気分が悪くなるんだなぁと、妙に客観的に感じている自分を見つけて、私はこの時少し落ち着きを取り戻すことが出来たのだった。




最悪、少しスピードが緩まるタイミングを見て、荷物ごと飛び降りよう。

怪我はしても、とばっちりを受けて殺されるよりかは遥かにマシだ。




そう思って、ドアのロックを気づかれないように外したその時、ようやく相手のタクシーが私の乗っているタクシーを振り切ったのだった。

そしてようやく、とてつもなく長い時間に思えた数分間の悪夢のカーチェイスは終わりを告げた。

しかしほっとしたのも束の間、よく考えるとこれは逆効果になる恐れもあった。

やり場を失った運転手の怒りや狂気は、どこへ向かうかわからないからだ。

案の定ハンドルをなぐりつけるようにして、運転手は相手のタクシーにキレていた。

そして私のほうを振り向いた。

この瞬間の恐怖を私は忘れることはないと思う。

運転手は振り向くやいなや、興奮の収まらない表情と口調で、今度は激しく私を罵ってきたのだった。



「振り切られたのはお前のせいだ!」

「お前の目的地がわかり辛かったから集中できなかったんだ!」



もう話なんかまともに出来るわけがなかった。

私は可能な限り冷静を装い、荷物を手繰り寄せ、目的地の近くまできていることだけを確かめてから、一目で多いとわかる金額を握らせた。

そして運転手がお金に気をとられている間に、半ば無理矢理にバックパックごと転げ落ちるようにタクシーから逃げた。

ただ振り向かずに走った。

1ブロック程離れて恐る恐る振り返ってみると、運転手は金額に満足したのか、追っては来ていないようだった。

私は立ち止まり、荷物と一緒に一旦腰を下ろした。




やった、助かったー!!!




早朝の誰もいない街で、貴重品を丸ごと持って移動するなんてことは、本当は危ないし怖い。

それでも何とかあの車内から逃れることが出来たことへの安堵の方が、路上の恐怖より、この時は遥かに勝っていたのだった。



そこから少し歩くと、すぐ待ち合わせしていた人と会うことが出来た。

私は頼まれていた荷物を渡し、お礼にと出してくれたフルーツサラダを食べた。

いつも食べているものなのに、この日は身体に染み渡るほど甘く感じた。



そういや、もう12時間以上何も食べていなかったんだ。



それすら気が付かなかった。

そして空腹が満たされてようやく、自分がとても疲れていることに気が付いた。

そんなこともわからないくらい緊張していたんだなと思った。

私はすぐにベッドに横になり、5時間くらい夢も見ずに眠った。




昼ごろ、窓から照りつける太陽の熱で目が覚めて、大袈裟かもしれないけれど「あぁ、生きていられて良かった。」と素直にそう思った。

そしてふと、気が付いた。

近頃ずっと悩んでいたことの答が、きらりと頭の中に浮かんでいることを。

それも信じられない程に明確だった。

答なんて出ないんじゃないだろうかと思っていたのが嘘のようだった。

まるで、スコールの後、急に晴れだした真っ青な空に浮かぶ太陽みたいに、それは鮮やかに、はっきりと目の前に浮かんでいたのだった。

霧が晴れたみたいだと思った。




改めて思う。

人生って不思議だと。

この旅で初めて、ひょっとしたら死ぬのかもしれないと思うような出来事があって、なんとか助かって、そしたらお腹が空いていたことに気が付いて、甘い果物を食べたら、次は疲れていたことに気が付いて、爆睡して、そして目が覚めた時には、悩み抜いた自分の人生の岐路に、選ぶべき道に、はっきり色がついていたのだった。

何だ、これ。

もうこんな目に遭うのは二度とごめんだけれど、やっぱり人生はおもしろいものだと思わざるを得ない。

運が悪いなんて、なぜかとてもじゅないけれど思えなかった。

そして、いつも守ってくれる旅の神様と自分の人生に、寝癖をつけたまま、ベッドの上から「ありがとう。」と思った。




こうして辿りついたカリという町に、実はまだ滞在している。

もう2週間半以上になるだろうか。

はじめはここも、3日くらいで抜けるはずのただの経由地だったのだけれど、信じられないほどの素敵な出会いに恵まれて、もう住んじゃってもいいかもしれないとまで思えるくらい好きな町になった。

のっけからこんなことがあったのにと、信じられないと思われるかもしれないけれど、私はカリという町が大好きだ。

その理由は次回のブログで細かく書いてみようと思う。





そして最後に。

いつも心配をかけてしまっているお父さんお母さん、今回は楽しい話題に違いないと更新を楽しみにしてくれていたのに、こんな内容で本当にごめんなさい。

このブログで余計心配をかけてしまうかもしれないけれど、沢山の人の優しさに包まれて、今本当に素敵で楽しい毎日を元気に送っています。




それではみなさん、また次回。


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
ご無事でなにより。ちゃんと帰っておいでや〜
でもやっぱり全部読むと、お前っぽいなと思った。
さとし
2012/03/10 05:44
>さとし
ありがとーぅ。
ちゃんと帰りますゆえ。「なんだかんだで自分はラッキーである説」は健在やからな。
かわちゃん
2012/03/10 11:13
生きてて本当によかったよ。
あみ
2012/03/10 18:29
>あみ
うん、ありがとう。ほんとに生きててよかった!
かわちゃん
2012/03/11 13:25
元気でよかった。最近もボリビアで邦人が亡くなられたそうですね。でも、ブログを読んでいると、テレビのニュースで見ているどころじゃないかんじ。
それでも半月も滞在するほど素敵な出会いもあるんやね。気をつけてね。
気をつけてもしようのないこともあるけど。
日本は花粉症の季節です。花粉のない国に行きたいです。
ふま
2012/03/14 16:54
>まさあきさん
え?!またボリビアで日本人が亡くなったんですか?
旅は楽しいものですけど、やっぱり命の危険とも隣り合わせですね。日本にいてても同じですが。
それでも本当にすばらしい出会いに恵まれて、結局3週間以上滞在することになりました。また次回そろそろ書きますね。花粉そろそろですもんね、私も帰国してからを考えると辛いです…。まさあきさんもお大事に。
かわちゃん
2012/03/15 04:12
そしてこの後強盗に遭うんですね…でも命はご無事で
護身用にスタンガン持つとかダメなん?
とりあえず生きて帰って来てくださいね、母より
べ|二
2012/03/21 15:34
>ベニ
そうそう。でもご無事ですよ、母上様。
スタンガンは奪われた時と、逆上されたときに殺される確立が非常に高まるので、なしだね。京都でまっとってください、べにお母さん。
かわちゃん
2012/04/21 04:15

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