かわちゃん紀行

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zoom RSS 永遠の灯は燃え続ける。

<<   作成日時 : 2012/02/03 08:32   >>

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トリニダーを出発し、民家さえまばらな田舎道をひたすら走る。

深い森、翡翠みたいな色をした川、まるで林みたいなサトウキビ畑、そして紺碧のカリブの海。

キューバの自然の豊かさを改めて感じている内に、ほんの3時間程でサンタクララに到着した。

この町は、ゲバラが指揮を執り革命軍の勝利を決定付けた戦いがあった場所であり、ゲバラの銅像と霊廟がある町として有名なところだ。



まずはバスターミナルから人の良さそうなリキシャー(自転車の後ろに荷台みたいな座席がある乗り物)をつかまえて、とりあえず町の中心部まで向かうことにした。

その途中、運転手が右手の方向を指差した。

「ほら、あれがゲバラだよ。」

赤くなる前の柔らかい金色の夕陽を背に、木立の向こうに黒い立像のシルエットが見えた。

キューバに3週間も滞在しているくせに、本当に自分がサンタクララに来れたことが全然信じられなかった。



翌朝、朝食をとりに近くのレストランへ。

店は空いているものの、たむろしている店員は誰も接客しようとする気配がない…。

キューバではよくあることだけれど、それにしても誰も気が付かない上に、呼んでみても聞こえもしないみたいだった。

さすがに諦めて他を探そうと思った時、後ろにいた人が声をかけてきた。



「一緒にコーヒーが飲みたいんじゃが、どうだろう。」



振り返って見てみると、そこにはおじいちゃんが立っていた。

地元の人に教えてもらうのも悪くないかと思った私は、二つ返事で一緒にコーヒーを飲みに行くことにしたのだった。

公園を突っ切って歩きながら話をしていると、75歳だというそのおじいちゃんは、自分はミュージシャンでスイスに住んでいると説明した。





はい、うそーーー!





なんでって、もう甘すぎるのである。

設定が。

キューバのケーキに匹敵する甘さ。

おじいちゃん、こういうのは設定が一番大事やねんで。

どんだけ設定がお粗末かというと、おじいちゃんは海外に住んでいるという割には英語が全く話せない、しかもスイスのどこの町に住んでいるのかと聞いても、ごまかしてばかりいる上に、どの楽器を演奏するのかと聞いてもイマイチはっきり答えられないのである。

今どき、幼稚園児でももうちょいまともな嘘つけるで…。



うーん、どうしたものか。



実はもうこの時レストランに入りかけていて、追い払うなら最後のチャンスだったのだけれど、なんとなく結局一緒にレストランに入ってしまったのだった。

おじいちゃんは、私が怪しみだしたことにひどく動揺して、ご機嫌をとるように話をしてくる。

残念ながらその媚っぷり、全くもって逆効果。





おじいちゃん(以下、おじい):「ゲ、ゲバラのコインあげようか…?」

私:「いらん。」

おじい:「ど、どうして?あげるy…」

私:「もう持ってんねん。」

おじい:「あ、そ、そうかぁ…。えーっと…、きみは…か、可愛いね!」(いい台詞思いついた!みたいな顔がマイナス100点)

私:「は?」






結構冷たく返事をしても、おどおどしてる割には妙に粘り強いおじい。

高齢者をいじめてるみたいでこちらの気分もよろしくない。

けれど連れて入ったのは自分の責任だったから、おごってあげるかわりにコーヒーを飲んだらすぐにレストランを出ていって欲しいという交換条件を出して、一杯だけ頼んであげることにした。

そして店員を呼ぶために手をあげた時、おじいはまさかの一言を呟いたのである。







おじい:「ア、アイスクリームも売ってるのぅ…うまそうじゃぁ…(チラッ)」







私:「あ゛ぁ?なんて?」(もはや日本語)






おじい:「いや、だからその…、ア、アイスを…食べたいなぁーって…。一つだけ買ってほsh…」






私:「あかん。」(もう日本語)






おじい:「う〜ん、でもぉ、わしイチゴが好きなんじゃぁ。だから、ちょっとだけ食べたいなーって…。」






私:「コーヒーだけっつったよな?」







おじい:「は、はい…。」







しゅんとするおじい。







あのさぁ、子供やないねんから!!!







完全に私がイライラしているこの状況で、更にイチゴのアイスを頼もうとするおじい。

ハートの強さだけは一流のようである。

コーヒーを飲み終えたタイミングでやっぱりレストランから追い出すことにし、ようやく私は落ち着いて食事をとり始めることが出来たのだった。

「朝から変なもん拾てもうたなぁ…。」

今から思えばかわいいもんだけれど、私はちょっと後悔しながら、エスプレッソを飲み干した。




そんなこんなで朝食を済ませた私は、一度カサに帰ってチェックアウトをしてから、気を取り直してゆっくりと霊廟に行くことにした。

リキシャーで15分程の場所から歩いて向かう。

青い空にそびえるゲバラの像が迫ってくる。

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ライフルを右手に携え、左手を腰の辺りにやり、力強く前を向いて歩いている。

そんな瞬間を切り取っていた。



「とうとう来ちゃったなぁ。」



8年越しで思い続けた相手にようやく会えた瞬間だった。

私は社会主義者でも共産主義者でもないし、普通の人生を歩んできただけなんだけれど、本で読んだ彼の人生からはすごく勇気をもらってきた。



小さくても自分の正義を持つこと、そしてそれを行動をもって貫くこと。

また、どんな状況でも腐らず前を向くことが大事だと。



だから、お礼をするような気持ちでここに来ていた。

もう、なんだろう、しばらく動けなかった。

じっとりと汗をかきながら、ひたすら眺めていた。



その後私は荷物を預け、ゲバラの博物館と遺骨の納められている霊廟を見学することにした。

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像の裏手、右手が博物館、そして左がゲバラとその仲間の霊廟となっている。

まずは右手の博物館へ。

日差しのたっぷりと差し込む明るい真っ白な空間には、彼の幼少時代の写真から、通信簿、手紙、学生時代に着ていた白衣や革命時に着ていた人民服、それから武器などのかつての所持品が並べられている。

私は団体のツーリストをやり過ごしながらゆっくりと見学をした。

これまで平面で知っていただけのゲバラの人生が、まるで立体的に浮き上がって見えるようだった。



それから霊廟の少し重い扉を開けた。

ダークブラウンを基調とした間接照明だけの薄暗い室内。

ひんやりした空気の中目をこらすと、壁一面にゲバラと共に戦って命を落とした戦士のレリーフが飾られていて、その一つ一つにコーラルピンクの花が一輪手向けられている。

それらの中に星型の照明があたっている陶板があった。

それが、ゲバラのお墓だった。

その照明以外は陶板の大きさも何もかも他の戦士と同じ。



ゲバラらしいな、と思った。



手を合わせ、目をつぶって冥福を祈った。

その奥では、フィデルが灯した【永遠の灯】がゆらゆらと優しく燃え続けていた。



今の世の中をゲバラが見たら、どう思うのだろう。

彼ならどんなことを言うのだろう。



そんな答えのないことを想像しながら、再び重い扉を押して外に出た。

目が焼けるような強い太陽と、鮮やか過ぎる赤い花に目に一瞬目が眩んだ。

ここへ来れてよかったと、思った。



エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ。

アルゼンチンに生まれ、祖国ではないキューバの革命を成し遂げる為に命をかけたキューバの英雄。

革命後、ゲバラはキューバに長く留まることはなく、ラテンアメリカの自由を勝ち取る為に再び革命へと身を投じ、そしてボリビアで死んだ。

キューバ革命のリーダーであり、圧倒的なカリスマ性を持つキューバの英雄フィデルカストロは彼のことを【道徳の巨人】と呼ぶ。

喘息持ちの頑固な、そして人一倍正義感の強い子供だったゲバラは、仲間と共に、巨大なアメリカが糸をひく一国の歴史を変えた。

そしてラテンアメリカの永遠のヒーローになった。

詩と、マテ茶と、家族と、なによりキューバを愛した一人のアルゼンチン人の生き方は今もなお熱狂的に支持されている。

もっともっと書きたいことはあるけれど、薄っぺらくなってしまうのもあれだから、興味がある人はぜひ本を読んでもらえればと思う。

Tシャツとか、そういうファッションとしてだけではなく、どんなことをしたのか、どんな思想に生きたのかをぜひ知って欲しい。

もちろん、どんな写真でも絵になってしまう外見のかっこよさも魅力のひとつだけれど、生き方こそがゲバラの一番の魅力だと思うから。

日本で買える本だと、三好徹さんの【チェ・ゲバラ伝】がお薦め。

母から初めてもらったのがこの本だった。

革命後のコンゴやボリビアでのこともしっかり書かれている。

キューバを旅した今、日本に帰ったら改めてもう一度読みたいと思っている。



それからもう一つ、この町にある重要な博物館を訪ねた。

サンタクララはキューバの中央に位置していて、東部を拠点にしていた革命軍にとって、この地をおさえるということは非常に重要だった。

そこで、ゲバラの率いる部隊は1958年に政府軍の増援部隊と物資を載せた装甲列車を襲撃し、多くの武器を奪い、この決戦で勝利する。

ほぼ同時期にカミーロもヤガウェイの戦いで勝利をおさめ、この二つの戦いの勝利がバティスタを追い詰め、12月31日に終にバティスタはドミニカ共和国に亡命し、翌日1月1日に革命軍がハバナに突入、革命軍の勝利となったのである。

その装甲列車襲撃跡地に行ってきた。

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そこには展示ルームに改造された車両が当時の襲撃時の通りに並び、その中には当時を物語る写真や武器などが飾られていた。

画像


最後の車両の中には子供達が書いた革命に関する絵が飾られていた。

子供達の絵は、明るい色で、たくましい革命戦士を描いていた。

この国で、革命がどのように捉えられているのかを窺い知ることが出来たようだった。




そしてその日の夕方、ハバナに戻るためにバスターミナルへ向かった。

戦跡を巡り、いい感じに感動をひきずっていた私は、ここでキューバという国の適当さを改めて思い知ることになった。





なぜかバスのチケットをいつまで経っても発行してくれないのである。





困る。

それ、めっちゃ困る。





前日予約していたにも関わらず、待てど暮らせど、どんだけ係員を追いかけ倒しても一向に「まだ。」の一点張り。

バスが出る15分前に発行すると言っていたくせに、バスが来てもまだ発行してくれないのである。

さすがに焦って詰め寄る私に、係員はこう言った。




係員:「まだ発行できない。バスはまだまだ出ない。」




うそつけー!乗客乗せ始めてるやん!

ほんま頼むから発行して!




しばらくうろうろと他に発行してくれる人がいないものかと探すものの、誰に聞いても知らないとのこと…。

その日の夜ハバナで予定もあったから、もう勝手に乗ったろかなと思った矢先、思いついたようにようやくチケットを発行しだしたのである。




もーーーー!何のタイミング!!




思いっきり出発時刻を過ぎていたから、急いでそのわら半紙みたいなチケットを握り締めてバスに飛び乗った。

そして私が見た光景とは…






「え…全員座ってる…。」






そう、全員席に着いていて、出発をまだかまだかと待っていたのである。

そして当然「あんたのせいで出発遅れてるやん。」という冷たい視線を容赦なく受ける羽目に…。

さらに私を乗せた瞬間、すぐにバスは出発した。

まさに、「コイツ待ちでした。」みたいなタイミングで。





ちゃうねん!!





私は誤解を解くことも出来ないまま、気まずい車内の雰囲気に耐えながら愛しいハバナへ戻ったのであった。

やっぱり、そう楽には旅行させてくれないらしい。

これもまた私の愛しいキューバの一面なのであった。



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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
勉強なったょ!
てか、おじいちゃんおもしろすぎでしょ!ちょっとカワイイね。
けーこ
2012/02/03 11:31
リクエストがあったので、今回説明長すぎました。w
おじいちゃん、かわいいけど、さすがに朝一で相手するの疲れた。。
かわちゃん
2012/02/03 11:40
キューバ編は、ほんまぐっと想いがこもっとるやんなぁ(^O^)/
文章から想いが溢れてる感じやね( ´ ▽ ` )ノ
たく
2012/02/03 12:35
>たく
せやろ。だって愛してるもん、まじで。
あー、戻りたいぜ、キューバ!我が恋人!!w
最終回もお楽しみに〜★
かわちゃん
2012/02/03 13:00
あ、そうだよね、それなんかいうと思ったわ(笑)
やっぱり、愛だよね、愛( ´ ▽ ` )ノ
最終回待ってます〜
たく
2012/02/03 19:34
>たく
全ては愛やからね!最終回がんばって書いておりますー★
かわちゃん
2012/02/03 23:04
本読んでみるわぁ
しんすけ(いとこの方)
2012/02/09 08:20
>しんちゃん
ぜひ読んでみてー!いとこ妹がなんでこんなにはまったのかわかるから♪
かわちゃん
2012/02/09 10:06

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